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回復期に始める、心を満たす趣味の見つけ方と無理なく続けるヒント

Tags: 回復期, 趣味, セルフケア, 心の回復, ワークライフバランス

燃え尽きを経験された後、心身の回復に取り組んでおられることと思います。以前は当たり前のようにできていたことや、楽しめていたことにも、今はなかなか手がつかないかもしれません。心も体も疲れてしまい、何もする気力が湧かない時期を過ごされている方もいらっしゃるでしょう。

回復期には、心身の休息が最も大切です。同時に、少しずつ心にゆとりを取り戻し、「仕事をしている自分」だけではない自分と向き合う時間も、ゆっくりと持つことが回復を後押ししてくれます。そこで今回は、回復期に焦らず始めることができる、「心を満たす趣味」について考えてみたいと思います。

なぜ回復期に「趣味」が大切なのでしょうか

燃え尽きを経験すると、多くの場合、仕事と自分自身の境界線があいまいになり、自分の価値を成果や生産性だけで測りがちになります。回復期に趣味を持つことは、そうした状態から抜け出し、自分自身の内面や、仕事以外の世界に目を向けるきっかけになります。

回復期に心地よい趣味を見つけるヒント

いざ趣味を探そうと思っても、「何から始めればいいか分からない」「以前は楽しかったことが今はそう思えない」と感じるかもしれません。大切なのは、無理をしないことです。

  1. 過去の興味を思い出してみる: 子供の頃好きだったこと、学生時代に熱中したこと、以前やってみたいと思ったけれど時間がなかったことなど、心の片隅にある「好き」の種を拾い上げてみましょう。
  2. 「簡単そう」「楽しそう」を優先する: 深く考えすぎず、直感で「これならちょっとやってみてもいいかな」「面白そう」と感じるものから試してみてください。始めるのに大がかりな準備や特別なスキルが必要ないものがおすすめです。
  3. 「〜ねばならない」を手放す: 上手くやらなければ、立派なものを作らなければ、成果を出さなければ、といった考えは一度手放しましょう。趣味は誰かに評価されるものではありません。純粋に「やってみる」こと自体を楽しんでみてください。
  4. 多様な選択肢に触れる: 本屋さんで趣味のコーナーを眺めたり、地域のカルチャーセンターのチラシを見たり、インターネットで「簡単な趣味」「インドア 趣味」「癒される 趣味」といったキーワードで検索してみたり。情報収集だけなら疲れません。
  5. 軽い気持ちで試してみる: いきなり高価な道具を揃えたり、講座に申し込んだりする必要はありません。例えば絵なら100円ショップの色鉛筆とノートから、音楽なら無料の楽器アプリから、手芸なら古着をリメイクするといった簡単なことから試せます。

見つけた趣味を無理なく続けるためのヒント

回復期には、体調や気分の波があるのが自然です。始めた趣味も、毎日続けよう、完璧にやろうと思うと、かえって負担になってしまうことがあります。

  1. 完璧を目指さない: 「今日はここまででいいや」「気分が乗らないからやめよう」と、自分の心身の声に耳を傾けることを優先してください。
  2. 短い時間から始める: 例えば「一日5分だけ」「気が向いた時に10分だけ」のように、ごく短い時間から始めてみましょう。慣れてきたら、自然と時間が伸びるかもしれません。
  3. 体調や気分に合わせて柔軟に: 体調が優れない日は無理せず休み、気分転換に他のことをしても構いません。趣味は義務ではありません。
  4. 「やらなきゃ」と思ったら休む: 趣味が「〜ねばならないこと」になってしまったら、それはもう趣味の目的から外れてしまっています。そう感じたら、一度お休みする勇気も大切です。
  5. 小さな変化や楽しみに気づく: 上達することだけが目的ではありません。色が綺麗だな、この手触りが心地よいな、前に気づかなかったことに気づけたな、といった小さな発見や変化に目を向けてみましょう。

小さな一歩を踏み出したAさんの話(フィクション)

システムエンジニアとして多忙な日々を送り、燃え尽きてしまったAさん。回復期に入り、体力は戻りつつあるものの、以前のように複雑なコードを書いたり、難しい技術書を読んだりする気力はなかなか戻りませんでした。「自分はもうダメかもしれない」と落ち込む日も少なくありませんでした。

ある日、散歩中に立ち寄った雑貨店で、綺麗な色のインクとつけペンを見かけました。「これなら、頭を使わずにただ色を眺めるだけならできるかもしれない」と、小さなボトルをいくつか購入しました。

帰宅後、ノートにインクを落としてペンで線を引いてみました。ただそれだけのことですが、紙の上に広がる色の変化や、ペンが紙に触れるカリカリという音に、少しだけ心が安らぎました。毎日少しずつ、その日の気分で好きな色のインクで線や形を描くのが日課になりました。

描くことに意味を見出そうとせず、ただひたすら色の美しさや、描いている時の感覚だけに意識を向けました。すると不思議と、頭の中をぐるぐる回っていた仕事の不安や自己否定の気持ちが薄れていくのを感じました。

しばらくすると、もっと色々な色を使ってみたくなり、水彩絵の具にも手を出しました。もちろん上手くはありませんでしたが、絵を描いている間は、仕事のことも、過去の失敗も忘れ、ただ「描く」という行為そのものに集中できました。

Aさんは、絵が上手くなったわけではありません。しかし、色と向き合い、手を動かす時間を持つことで、少しずつ心の落ち着きを取り戻し、「頭で考えること」だけではない自分自身の感覚を取り戻していきました。そして、絵を描く時間そのものが、彼にとって大切な心の充電時間となっていきました。

最後に

回復期に何か新しい趣味を見つけることは、義務ではありません。何もする気になれない時は、ただゆっくりと休むことが最も大切です。

もし少しだけ心に余裕が出てきたら、「これならできるかも」「面白そう」という、ほんの小さな好奇心の種を拾い上げてみてください。それが、あなたの心を満たし、自分らしいペースを取り戻すための一歩になるかもしれません。

趣味は、競争や評価とは無縁の、あなただけの時間です。焦らず、無理せず、ご自身の心と体が必要としているペースを大切にしてください。その先に、きっとあなたらしい回復の道が開けていくことでしょう。