復職後の仕事で一人で抱え込まない 心地よく「頼る」ヒント
燃え尽きからの回復を経て、いよいよ復職や再起の道を歩み始めた方もいらっしゃるかもしれません。新しい環境や久しぶりの仕事に期待を感じる一方で、「また以前のように一人で抱え込んで、心身をすり減らしてしまうのではないか」という不安を抱えている方も少なくないでしょう。
過去に燃え尽きを経験された方は、責任感が強く、一人で物事を進めるのが得意な方が多いように感じます。だからこそ、周囲に頼ることに抵抗があったり、「弱みを見せたくない」「自分でやりきらなければ」と考えたりすることもあったかもしれません。
一人で抱え込む働き方の落とし穴
以前の働き方を振り返ってみると、もしかしたら
- 誰かに相談する前に、まず自分で解決しようと必死になった
- 忙しい時でも「大丈夫です」と断れず、仕事を抱え込んでしまった
- 困っていることを周囲に伝えられず、ギリギリまで一人で頑張ってしまった
- 頼むことで相手に迷惑がかかると思い込み、すべて自分でやろうとした
といった経験があったかもしれません。このような働き方は、短期的な成果につながることもありますが、長期的に見ると心身への大きな負担となり、燃え尽きへと繋がる可能性があります。
復職・再起後に「頼る力」が大切な理由
回復期を経て、再び社会と繋がる上で、「頼る力」は非常に重要なスキルになります。それは決して「弱いこと」ではなく、むしろ
- 持続可能な働き方を築くため: 一人で抱え込まず、適切な量で仕事を進めるために必要です。
- 燃え尽きや不調の再発を防ぐため: 困ったときに早期に助けを求めることで、問題が大きくなる前に対処できます。
- チームや組織全体の力を活かすため: 他者の知識や経験を借りることで、より質の高い成果に繋がり、チームワークも向上します。
- 自身の心に余裕を持つため: 完璧を目指しすぎず、他者に協力を求めることで、精神的な負担を軽減できます。
のように、自分自身と周囲、そして仕事全体にとってプラスの効果をもたらす「強さ」となり得ます。
心地よく「頼る」ためのヒント
では、具体的にどのようにすれば、心地よく周囲に頼ることができるようになるでしょうか。いくつかのヒントを考えてみましょう。
1. 「頼る＝悪いこと」という思い込みを手放す
まず、「頼ることは迷惑をかけること」「自分は無力だと思われる」といったネガティブな思い込みがないか、自分の心に問いかけてみましょう。多くの場合、人は誰かの役に立つことに喜びを感じるものです。適切に頼られることは、相手の貢献意欲を満たし、関係性を築くきっかけにもなり得ます。
2. 小さな「お願い」から始めてみる
いきなり大きな仕事を丸ごと頼むのはハードルが高いかもしれません。まずは、資料の場所を聞く、簡単な確認をお願いする、といった小さな「お願い」から始めてみましょう。成功体験を積むことで、頼ることへの抵抗感が和らいでいきます。
3. 誰に、何を頼むかを見極める
頼む相手や内容を選ぶことも大切です。その分野に詳しい人、手が空いていそうな人、気軽に話せる人など、相手の状況や得意なことを見て判断しましょう。また、丸投げではなく、「〇〇について教えてほしい」「この部分のレビューをお願いしたい」のように、具体的に何をしてほしいかを明確に伝えると、相手も協力しやすくなります。
4. 頼むときの伝え方を工夫する
お願いをするときは、「お忙しいところ恐縮ですが」「もしお手すきでしたら」といったクッション言葉を添えたり、「〇〇の状況で困っており、△△について教えていただけますでしょうか」のように、状況とお願いしたいことを丁寧に伝えることを心がけましょう。そして、助けてもらったら、必ず感謝の気持ちを伝えてください。
5. 頼まれ上手にもなる
一方的に頼むだけでなく、自分ができる範囲で周囲からの依頼にも応じることも大切です。これは「ギブ＆テイク」というよりは、お互いに支え合う関係性を築くための自然な流れです。ただし、無理をして引き受けすぎないよう、自分のキャパシティを把握しておくことも忘れてはいけません。
実践例：Aさんの場合（フィクション）
以前、責任感が強く、プロジェクトのタスクを一人で抱え込み燃え尽きた経験のあるAさん。復職後、「今度こそ無理しない働き方をしたい」と強く思っていました。
最初はどうしても以前の癖で一人で考え込んでしまうことがありましたが、「小さなことから頼る」というアドバイスを思い出し、実践してみることにしました。
例えば、
- 会議で聞き漏らした箇所を、隣の席の人に「すみません、今の部分もう一度教えていただけますか」と尋ねる。
- 資料作成で迷ったとき、以前はその分野を担当していた同僚に「このデータ、どこを探せば見つかるかご存知ですか」と聞いてみる。
- タスクが少し溜まってきた時に、チームのチャットで「〇〇の件で少し詰まってしまっており、どなたか知恵を貸していただけると助かります」とオープンに相談してみる。
最初はドキドキしましたが、尋ねられた相手が快く応じてくれたり、「大丈夫だよ、一緒に考えよう」と言ってくれたりすることが多く、拍子応子抜けするほど抵抗がなかったことに気づきました。
小さな「頼る」を繰り返すうちに、一人で抱え込むことが減り、心に余裕が生まれていきました。また、周囲とのコミュニケーションが増え、チームの一員としての繋がりも以前より強く感じられるようになりました。
まとめ
燃え尽きからの回復を経て、新しい一歩を踏み出したあなたにとって、「頼る力」は心身の健康を守りながら、仕事でより良い成果を出すための大切なスキルです。
過去の経験から、「頼ることは弱いことだ」「一人で頑張らなければ」という考えがあるかもしれませんが、視点を変えてみましょう。適切に頼ることは、自分自身を大切にし、周囲と協調してより大きな力を発揮するための賢い働き方です。
焦る必要はありません。まずは、ほんの小さなことからで構いません。周囲に少しだけ頼ってみる勇気を持ってみてください。その一歩が、あなたが無理なく、そしてあなたらしく働き続けるための土台となるでしょう。回復は一方通行ではありません。ゆっくりと、自分のペースで進んでいきましょう。